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『ダーク』(桐野夏生)講談社文庫
【あらすじ】「私の中の何かが死んだ」出所を心待ちにしていた男が4年前に獄中自殺していた。何も知らされなかった村野ミロは探偵を辞め、事実を秘匿していた義父を殺しにいく。隣人のホモセクシャルの親友。義父の盲目の内妻。幼い頃から知っている老ヤクザ。周囲に災厄をまき散らすミロを誰もが命懸けで追い始めた。
【コメント】”先入観の天変地異”とでもいうべきだろうか?!『顔にふりかかる雨』・『天使に見捨てられた夜』・『水の眠り灰の夢』等、女探偵「村野ミロ」シリーズで得てきた私の固定観念(村野ミロのキャラクターイメージ)が見事に覆った作品である。読後前の予想が裏切られたといった方がわかりやすいかもしれない。読者は大概、物語の主人公に感情移入し、共感するのが普通だが、この小説に限ってはその”共感”を得る部分はあるが…、とにかく気持ちの動きが激しい。作品全体を包む異様な迫力、陰・悪・負。感情移入できないという点で不思議な感覚の内容である。 主人公・村野ミロは、この小説では、加害者でありトラブルメーカーである。”破天荒”・”滅茶苦茶”・”不気味”等、この小説の作風は何となく黒川博之を思わせる。感情移入させなくても読者を物語に引き込んでいく手腕はさすが!!上下巻、一気に読んでしまった。続編が出そうな終わり方だが、すぐ読みたいかといわれれば?。だが、「少しイメージが落ち着いたら、読んでみたい」と既に思わせているところが桐野夏生の魅力である。
by issa-izm
| 2006-05-14 00:30
| 書評&DVD鑑賞記
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